
フェアトレードとは? 意味や必要性・国際フェアトレード基準について解説
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目次 |
フェアトレードは、生産者が適正な価格で取引できるようにし、公正な貿易を通じて暮らしや環境を守る仕組みです。身近なところでは、小売店に並ぶコーヒーやチョコレート菓子、ワインなどの中に、フェアトレードの認証ラベルが付いているものが見られます。
本記事では、フェアトレードに関心がある方に向けて、フェアトレードの概要や基準、市場規模の推移などの情報を解説します。
フェアトレードは消費者の意識を少し変えるだけでも参加できる取り組みです。ぜひ最後までご覧ください。
フェアトレードとは?
食品表示やパッケージを注意深く確認して購入している方は、フェアトレードのラベルを目にした経験があるのではないでしょうか。このフェアトレードとはどのようなものなのでしょうか。フェアトレードの意味や必要性、対象となる産品を紹介します。
・フェアトレードの意味
フェアトレードは直訳すると「公平・公正な貿易」です。「フェア」にはスポーツのフェアプレーと同じく、ルールを守りながら、相手を尊重し対等な立場で関わるニュアンスが込められています。
国際貿易のフェアトレードは、主に開発途上国の生産者が適正な価格で継続的に産品を販売できる仕組みです。フェアトレードの対象となるのは主に農産物や手工芸品で、その労力や価値に見合った対価の支払いが保証されます。
さらに、適正な対価の支払いだけでなく、安全な労働環境や児童労働の禁止などもフェアトレードの概念に含まれます。
フェアトレードは、貧困や搾取のない取引を実現し、生産者の生活向上と自立を支援することが目的です。さらに、適正な対価の支払いによって、森林伐採や乱獲の生産プロセスから、環境に配慮した持続可能な生産プロセスに移行する効果も期待されています。
・なぜフェアトレードが必要?
フェアトレードが求められる背景には、開発途上国の生産者が適正な対価を受け取れず、不公平な取引が続いてきた歴史があります。16世紀以降、ヨーロッパ諸国が南米・アジア・アフリカを植民地化し、現地の人々を低賃金で強制的に働かせるなど、不公平な経済構造が定着しました。
第二次世界大戦後、多くの植民地が独立しましたが、依然として旧宗主国との貿易関係は続き、生産者が不利な状況に置かれる状態は変わっていませんでした。適正な対価が支払われないために、低賃金や長時間労働が常態化し、教育や医療を受ける余裕がなくなることは明らかでした。こうした背景を受け、公正な取引を求める市民運動が、主に欧米で広がりを見せました。
また農薬や化学肥料の過剰使用により土壌や水質が汚染される、森林伐採が進み生態系が破壊されるといった問題も大きくなっていました。しかし、これらの問題を改善するための費用は捻出する余裕はなく、現地の住人に健康被害やさらなる困窮をもたらしていました。
この社会課題は現在も解決されておらず、フェアトレードは依然として重要な課題です。
・フェアトレードの産品例
フェアトレードの対象となるのは、生産者の労働環境や取引条件が特に不公平になりやすい農産物や手工芸品が中心です。
中でもコーヒーは、世界的に需要が高く途上国の主要な輸出品であり、フェアトレードの主要な産品の一つです。コーヒーは「価格変動が激しく生産者の収入が不安定になりやすい」「中間業者が多く生産者に利益が届きにくい」「低価格で生産しようとすると環境負荷が大きい」などの課題があります。
そのため、フェアトレードの必要性が高く、認証製品市場で大きな割合を占めています。
以下の産品も同様の課題があり、フェアトレードの対象です。
● 紅茶
● カカオ
● スパイス・ハーブ
● 果物
● 加工果物
● ワイン
● オイルシード・油脂果物
● 食品その他(はちみつ、砂糖など)
● コットン製品
● 食品以外その他(化粧品、スポーツボールなど)
対象産品は年々増えており、より多くの分野で公正な取引を実現しようとする動きが広がっています。
・フェアトレードの対象国と認証生産者数の推移
開発途上国と呼ばれる国々が中心です。参加国は、2015年に世界75カ国に達した後、横ばいで推移しています。
フェアトレード認証を受ける生産者およびそこで働く労働者の数は年々増加しています。
フェアトレード生産者と農園労働者の推移
年 | 生産者 | 農園で働く労働者 |
---|---|---|
2015年 | 1,389,044人 | 195,701人 |
2016年 | 1,479,068人 | 185,986人 |
2017年 | 1,520,110人 | 193,007人 |
2018年 | 1,605,010人 | 178,051人 |
2019年 | 1,716,245人 | 174,136人 |
また参加組織は2015年時点で1,240組織でしたが、2019年には1,822組織に増えています。
参考:FAIRTRADE JAPAN.「フェアトレード|生産者」
フェアトレードとは?
フェアトレードの運動は欧米を中心に広まりましたが、消費者が公正な取引で作られた商品を簡単に見分けられる仕組みが求められていました。そのため、1997年に「国際フェアトレード基準」が制定され、フェアトレード認証制度が整えられました。
国際フェアトレード基準の概要や基準内容、認証ラベルの役割を解説します。
国際フェアトレード基準とは?
国際フェアトレード基準とは、フェアトレード製品が公正な取引の基で生産・販売されていることを保証するための国際的な基準です。この基準は、国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)に加えて、生産者、労働者、企業、消費者、NGOなどのステークホルダーも加わり、定期的に見直されています。
国際フェアトレード基準は、開発途上国の生産者と労働者の持続可能な開発の促進を目指して設計されています。生産者と取引関係者は、国際フェアトレード基準に基づいて生産・取引しなければなりません。
国際フェアトレード基準では、貿易において不利な立場にある地域の生産者を優先的に認証対象としています。これは、経済的な格差や社会的な条件を考慮し、公正な取引を促進するためです。認証対象産品は、先に紹介した産品と基本的に同じです。
・国際フェアトレード基準の内容
国際フェアトレード基準は、生産者や取引関係者が公正な取引を行うために順守すべきルールを経済・社会・環境の3つの基準で定めています。
【経済的基準】
● フェアトレード最低価格の保証で生産者の安定を支援
● フェアトレード・プレミアム(奨励金)の支払い
● 長期的な取引の促進と前払いの保証
【社会的基準】
● 安全で公平な労働環境の確保
● 差別・児童労働・強制労働の禁止
● 民主的な運営の推奨
【環境的基準】
● 農薬や化学薬品の削減と適正使用
● 有機栽培や生物多様性の保全を奨励
● 遺伝子組み換え品の禁止
上記のうち、国際フェアトレード基準の最大の特徴は、フェアトレード最低価格とフェアトレード・プレミアムの制度です。フェアトレード最低価格の保証では、市場価格が変動しても生産者が生産コストをまかなえる最低価格を保証します。
フェアトレード・プレミアムは、生産地域の社会発展のために生産者組合へ追加で支払われる資金で、学校の建設や医療施設の整備など、生産以外にも利用できる点が特徴です。
・国際フェアトレード認証ラベルとは
国際フェアトレード認証ラベルは、公正な取引の証として付与されるラベルです。ラベルの付いた商品は、社会的、環境的、経済的基準を定めた国際フェアトレード基準を満たしていることを示します。
ラベルを目印にすれば、消費者はフェアトレードの商品を簡単に選べます。すでに日本を含む多くの国で利用され、世界で最も認知されている倫理的ラベルの一つです。
国際フェアトレード認証ラベルは、黒地に青と緑の人型シンボルが描かれたマークが基本デザインです。用途や製品によって、以下の種類があります。
種類 | 意味 |
---|---|
国際フェアトレード認証ラベル | 最も一般的なラベル 製品の原料が全てフェアトレード認証のもの 主にコーヒー、バナナ、カカオなどの単一原料製品に使用 |
国際フェアトレード認証原料調達ラベル | 一部の原料のみフェアトレード認証を受けている場合に使用 |
国際フェアトレード認証コットンラベル |
フェアトレード基準に沿って生産されたコットン製品に使用 |
マスバランス適用ラベル | 加工品など一部の原料が物理的に追跡できない場合に適用 |
日々の買い物でも、国際フェアトレード認証ラベルに注目してみてはいかがでしょうか。
フェアトレードの広がり
フェアトレードの市場規模は堅調です。ここでは、世界市場と国内市場のフェアトレードの広がりを解説します。
・フェアトレードの世界市場規模
フェアトレードはグローバルな取り組みに成長しています。2016年の国際フェアトレード認証製品の世界市場規模は、約78億8千万ユーロ(約9470億円)と巨額です。
背景にあるのは、前述した生産者組織の増加や、主要産品であるコーヒー、バナナ、砂糖、お茶などの堅調な取引拡大です。さらに、サステナビリティの意識の高まりによるカカオ販売量の増加も大きな要因です。
日本においてもフェアトレードは堅実に成長しています。2023年の国内フェアトレード市場は初めて200億円を突破しました。この数値は、10年間で約2.2倍の拡大に相当します。
2023年のフェアトレードの増加要因としては、まずコーヒー市場の堅調な伸び(前年比108%)が挙げられます。またプライベートブランド商品の拡大が、市場成長を牽引しました。特にカカオを使用する輸入チョコレートの販売量増加は、フェアトレード拡大に大きく貢献しました。
・フェアトレードとサステナビリティの関係性
サステナビリティとは、持続可能性を意味し、社会・環境・経済のバランスを保ちながら将来にわたって発展できる仕組みを指します。このサステナビリティを実現するための国際的な目標が、SDGs(持続可能な開発目標)です。
フェアトレードはSDGsの目標のほとんどに関連しています。フェアトレードは貧困や労働環境の改善、人権保護を促しながら、持続可能な農業・貿易を支援し、それによって地球環境の保護につなげられるからです。
以下の目標は、フェアトレードに特に関連付けやすいでしょう。
● 貧困をなくそう(目標1)
● 飢餓をゼロに(目標2)
● 働きがいも経済成長も(目標8)
● 人や国の不平等をなくそう(目標10)
● つくる責任つかう責任(目標12)
● 気候変動に具体的な対策を(目標13)
● 陸の豊かさも守ろう(目標15)
● パートナーシップで目標を達成しよう(目標17)
サステナビリティの考え方は国際的な取り組みにとどまらず、個人の意識にも根付きつつあり、消費者の自発的な商品選択の形でフェアトレードを後押ししています。
フェアトレード・プレミアムとは
フェアトレードの大きな推進力となっているのが、生産者に付与されるフェアトレード・プレミアム(奨励金)です。制度の概要と金額の推移を解説します。
・フェアトレード・プレミアムの意味
フェアトレード・プレミアムとは、品物の代金とは別に支払われる奨励金であり、組合や地域の経済・社会・環境の発展の資金として使われます。フェアトレード認証商品の取引において、輸入業者(ブランド・小売業者など)が生産者組合(協同組合など)に対して支払う仕組みです。
生産者組合は、受け取ったプレミアムの使い道を民主的に決定するように求められています。具体的には、以下のような使い方が挙げられます。
● 生産活動の向上:収穫量向上のための農業トレーニング、農業機械や資材の購入など
● 教育支援:学校の建設や設備の充実、奨学金制度の提供など
● 生活環境の改善:住宅支援や修繕のための資金提供、診療所や病院の建設など
● 地域インフラ整備:道路や橋の建設、公共施設の整備など
● 経済的支援:生産者への収入補助、低利融資など
このように、フェアトレード・プレミアムは幅広く活用できます。
・フェアトレード・プレミアムの金額
生産者が受け取るフェアトレード・プレミアムの総額は年々増加しています。フェアトレード市場の拡大に伴い、2022年には約2億2,280万ユーロ(約307億1,000万円)と、前年比10%増で過去最高額を記録しました。
このうち、主要産品であるバナナ、カカオ、コーヒー、コットン、花、砂糖、茶で、約2億1000万ユーロ(約289億円)と大部分を占めています。
フェアトレード・プレミアムの受け取り手は、世界の180万人以上の生産者・労働者です。単純に平均すると、一つの認証生産者組織当たり約11万ユーロを受給している計算になります。
フェアトレード・プレミアムの総額で日本からの支払いは、約9,824万円でした。日本の経済規模を考慮すると、他国と比べて決して多いとはいえません。逆に考えると、フェアトレードへの関心の高まりによって、貢献度を大きく増やせる余地があります。
参考:FAIRTRADE JAPAN.「開発途上国の生産者に支払われたフェアトレード・プレミアム 過去最高額の約307億1000万円、昨年比10%増を記録」
まとめ
フェアトレードは、開発途上国の生産者が適正な対価を受け取れる仕組みです。不公平な取引に反対する民間活動から始まったフェアトレードは、世界中に賛同者を増やし、コーヒー、カカオ、紅茶などを中心に拡大を続けています。
近年は、サステナビリティやSDGsと関連付けてフェアトレードを考える人たちも増えてきました。フェアトレードは輸入業者や政府だけが推進するものではなく、消費者の意識と購買行動の変革も重要な要素です。
日々の買い物で国際フェアトレード認証ラベルの付いた商品を買うのは、消費者が身近に取り組める方法の一つです。生産者の立場に立ったメーカーや輸入業者の商品を選び、フェアトレードの推進に貢献していきましょう。
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